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INSTeM – INSTeM https://stage.instem.jp Inter-field Network for Science, Technology and Media Studies Fri, 19 Jul 2024 01:40:45 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6.10 《日常のなかのデザイン日記 04》 一枚の写真ができるまで https://stage.instem.jp/article/2024/03/08/1647/ https://stage.instem.jp/article/2024/03/08/1647/#comments Fri, 08 Mar 2024 03:04:24 +0000 https://stage.instem.jp/?p=1647 この3月、雑誌『5: Designing Media Ecology』がリニューアルして新たにスタートする。これを書いている今はちょうど、雑誌のデザイン制作まっただ中である。そこで今回は、街中で見かけるデザイン観察日記とは少し趣向を変えて、今回の表紙のデザインができあがっていく過程を紹介してみたい。

『5: Designing Media Ecology』の表紙の画像は、第1期からずっと中央に数字の「5」が配置されたレイアウトを使ってきた。

第1期『5: Designing Media Ecology』の表紙と裏表紙

表紙の画像には、じつは結構こだわりがある。CG合成などで「5」の画像を写真に追加するのではなく、実体があるモチーフを制作してそれをカメラで撮影するなどして画像をつくっている。たとえば第1期1号の表紙画像は、感光紙で「5」の画像を浮き出させたモチーフにしている。第2号はミカン果汁を使ったあぶり出し、第3号はプロジェクタで地面に「5」の文字を投影、第4号は透明フィルムに文字をプリントしてフィルム越しに風景を撮影、といった具合である。手間も時間もかかるが、あえて紙の雑誌をつくるなら、表紙の画像も実体のあるものにしたいと思って制作してきた。

第2期『5: Designing Media Ecology』の発行にあたって、表紙のレイアウトはリニューアルしたが、メインに使う画像の制作方法は引き継ぐことにした。そこで第2期1号のために作ったのが、冒頭のモチーフだ。木の板に細い釘を打って、そこに細い刺繍糸をめぐらせて「5」の形が現れるようにした。最初に「こんな感じの写真を撮りたいな」と考えたときに書いたメモが残っている。

このメモに至るまでにいくつかの腹案があったのだけど、最終的にカラフルな刺繍糸と板を使おうと決めてからは、順調に楽しく作業を進めていった。メモにもあるとおり、まずは材料の買い出しから。新宿の手芸屋さん、愛知県長久手市にある大学近くのホームセンターをのぞき、さらにネット通販も使って、使いたい材料を買い集めた。

上の写真は、ホームセンターで手に入れた品々。手元に工具がなかったため、ノコギリやらカナヅチやら、ゼロからの買い出しになってしまった。職場は文系の大学なので、工作室などの設備もない。研究室のなかでギコギコと木の板を切っていると、「うちの大学でほかにこんな作業している人、いるんだろうか…」と不思議な気持ちになってくる。幸い不審者として通報されることもなく、順調に下地づくりの作業へ。

ちょうど良いサイズに切った板の木目の色を少し白っぽく調節するために、ジェルステインという塗料を何度か重ねて塗っていく。木の板そのままの色だと少し生っぽい感じが出てしまうので、写真を撮って表紙に使ったときにちょうど良い背景になることを目指して濃さを決める。

この板に、「5」の文字の形の紙を乗せて、上から細い釘を打ち付けていく。この釘に刺繍糸を絡めていくことで、板の中央に「5」の文字が出るようにしたい。糸の密度を想像しながら、釘の間隔を決めていく作業になる。

パチンコ台のようだが、これで土台は完成。次は、この釘に刺繍糸を絡ませる。事前に、右上あたりから赤→オレンジ→黄色→黄緑→緑→水色→青→紫という円環状の配色にすることを考えていたので、そのイメージに近づくように糸の色を選びながら少しずつ張りめぐらせていく。

ランダムに糸を絡めているように見えるが、じつは緻密に計算されている。……というのは嘘で、実際のところはわりと行き当たりばったりな感じで糸を張っている。そのため、全周360度のなかで色の配分が偏ってしまい、ちょっと戻ったり修正したりしながら作業を進めていく。

こうして完成させたのが、下の写真のモチーフ。

正面からだとはっきり「5」の文字が見える。表紙のメイン画像としてちょうどいい案配を見極めて、糸を張る作業は完了。ちなみに、板を少し横に傾けると、「5」の文字よりも釘と釘をつなぐ糸の方がよく見えてくる。

大きなネットワークの中心になっているように見える釘もあるけれど、辺境の地のような釘もある。糸と糸の間には不規則な重なりと隙間が生まれ、それぞれが思い思いの多角形を描き出す。ひとつの糸をたどっていくと、いつの間にか隣の色に変化して、ここからが何色とは言い切れない曖昧さの連なりが全体を構成している。今回の特集テーマ「間(あわい)の思想」から連想したイメージを、あまり直接的になりすぎず、かといって意味不明にもなりすぎない程度に、視覚的な面から表現できているといいのだけど、どうだろう。

第2期『5: Designing Media Ecology』第1号の表紙は、こうした手順で完成させた写真を使って制作している。このエッセイを書いている時点では、まだ印刷工程にまでは進んでいないのだけど、完成した第2期1号は、2024年3月のINSTeMのコンベンションでお手にとっていただける予定だ。中身の記事がもちろん第一なんだけど、お時間があったら表紙の写真にもちょっとだけ目を留めていただけると、とっても嬉しいです。

※写真と画像は、すべて筆者による撮影・作成。

(『5』第2期1号は2024年3月9日からINSTeMオンラインショップで販売中です)

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《佐倉統のフィールドノート①》 韓国には大人向けの科学技術館がない https://stage.instem.jp/article/2023/06/13/919/ https://stage.instem.jp/article/2023/06/13/919/#respond Tue, 13 Jun 2023 05:19:41 +0000 https://stage.instem.jp/?p=919 今年(2023年)の4月から、サバティカルを利用して韓国に滞在している。こちらのAIやロボットに対するイメージを調査するためだ。2か月経ってだいぶ慣れてきたところ。韓国と日本、当然ながら同じところ、違うところがいろいろある。そういった比較でちょっと興味深いものを御紹介していきたい。

最近気づいた日韓相違点のひとつは、科学技術館が子供向けのものしかないということだ。日本には東京お台場の日本科学未来館や北の丸の科学技術館、大阪市立科学館、名古屋市科学館など、子供だけでなく大人も楽しめるコンセプトの科学技術館がいくつかある。台湾には台中に立派な国立自然科学博物館がある。インドや中国*についてはよく知らないが、アメリカやヨーロッパでも状況は同様だ。

だが、韓国には大人向けの科学技術館がない。科学技術館そのものは首都圏にはソウル市のほか隣接する果川市と仁川市にあり、その他韓国の主要都市──釜山、光州、大邱、大田、蔚山などにも設置されている。ほとんどが国立のものだ。ソウルと仁川のものは行ってみたが、どちらも体験型・参加型を中心に子供たちの興味を惹く工夫がこらされていて、科学情報の提供も過不足なく洗練されており、よくできた児童向け科学館である。

だが、大人が見ることをまったく想定していない。某館では大人だけでは入場できませんといったんは断られ、科学コミュニケーションの研究をしているんですと説明して、どうにか入れてもらえた次第。別の所でも来館の目的を聞かれた**。

参加体験型の楽しめる展示が多く、よく考えて設計されている

なんで子供向けばかりなのかと、ソウル大学の旧知の科学技術社会論研究者に聞いたら、入館者数を稼ぐためだという答えが返ってきた。博物館建設は政治家の利権が絡んで決められることが多い。しかし表向きの建設理由が必要なので、大勢の入館者が見込めて世に貢献するコンテンツとして青少年あるいは児童をターゲットにした科学技術ものが選ばれる、というのである。たしかにソウルでも仁川でも、子供たちは大喜びだった。教育効果は高いだろう。それは間違いない。

彼の説明には説得力がある。科学技術館だけでなく自然誌博物館もお子様向けがほとんどだからだ。恐竜や宇宙が子供も喜ぶ鉄板コンテンツなのは世界万国共通。来館者数というわかりやすい、ある意味安直な指標をかせぐ必要があるとすれば、美術や文化物ではなく、わかりやすい科学系が中心になるのは理解できる。

もう少し極端に言えば、科学技術館が動物園的な存在として認知されているということである。子供の教育啓発と娯楽的要素の組み合わせ。大人向けの来館者数が子供向け科学技術館ほど見込めないのはやむをえないとしても、これだけ工業が発展して情報技術産業は世界トップクラスにある国としては、もう少し大人が科学技術を楽しむ施設があってもいいように思う。韓国の歴史的な科学技術についてほとんど展示や説明がないのも、もったいない気がする。

ところどころにこのような科学者・技術者たちの言葉が書かれているが、韓国の科学者は登場しない

ロボットのことについていろいろな人の話を聞いていると、基本的な部分は日本人のロボット観とよく似ているものの、ロボットとの距離感に戸惑ったり、親密さをそこまで感じなかったりという感覚が、日本人より多い割合で見られるように思う。AIBOの長寿を祈願しに寺に行くのは理解できない、韓国の文化コードにない、とまで言う人もいた。韓国文化の底流にあるシャーマニズムとの関連を指摘する人もいた。

以前、東アジアの科学技術社会論研究会で、韓国には鉄道オタクがいないという発表があった。代わりに飛行機オタクが多いという。後で別の韓国人に聞いたらそんなことないぞとムキになって反論されたのでそこまで信憑性が高い話でもなさそうだが、それでも日本より圧倒的に少ないことは確実だとその反論した人も言っていた。

社会の中での技術の位置、人と技術の距離、人工物への親密感。これらは、日本と微妙に異なっているようだ。それが、大人向け科学技術館がないことに表れているというのは強引に過ぎるだろうか。

仁川広域市子供科学博物館にて。みんな大好き、ロボットの集団ダンス

つい先日、韓国初の宇宙ロケット、ヌリ3号の打ち上げ成功があった。韓国語がよくわからないままつけっぱなしにしているテレビのニュースチャンネルでも大々的に報じていたが、もうひとつ熱量が伝わってこない。韓国で初めての自国ロケット打ち上げなのに。ヌリロケットは積載容量が小さい上に静止衛星軌道までは届かないなど技術仕様にはいろいろ問題があり、単なる政治的パフォーマンスだとの批判も強い。しかしそれならそれで、政治的側面とも絡めてあれこれ議論が起こりそうなのに、そういう取り上げ方でもない。政治家の不正や汚職追及、さらには福島の「汚染水」(韓国ではこのように言う)の方がはるかに熱っぽく報道されている。ある種の技術について、他人事のように若干遠くから見ているのだろうか。

一方で、生活場面での情報技術の浸透度というか依存度はものすごい。スマホが完全に社会のインフラになっていて、大げさでなく、外食もコンサートも列車に乗るのも何から何までスマホがないと生活できない。情報技術にどっぷり浸かっている社会だ。

この、一方では科学技術を敬して遠ざけるような距離感と、頭のてっぺんまで情報技術に浸かって日々を暮らしている状況との格差が、どうにもうまく理解できずに日々を送っている。

* 中国には、北京、上海、広州、武漢、香港などの主要都市には科学技術館がある。ウェブで調べた限りでは、やはり子供や青少年がメインターゲットになっているところが多いが、大人料金が設定されていたり、大人の訪問クチコミが書かれていたりするところが多く、必ずしも子供限定ということはないようだ。日本に似た状況ではないかと推察される。

** 釜山のLGディスカバリーラボはおもしろいという情報を得ているが、未見。ウェブページを見る限りではやはり青少年向けのようでもある。

(写真はすべて著者による撮影。画像の一部を加工している写真があります)

仁川広域市子供科学博物館。やっぱり子供向けの雰囲気
こちらも参加体験型型展示が主流。これは人体の大きな模型の中を来館者が通り抜けることができるようになっていて、口から食物が入り消化吸収されて最後排泄されるまでを「体感」できる展示
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https://stage.instem.jp/article/2023/06/13/919/feed/ 0